natsume.blog

Something about cars, bikes, cooking and many other things.

人は忘れるいきもの

もしも、あらゆる経験や知識を記憶し、忘れない人間がいるとしたら、その人生においてすばらしい結果を出すのはそう難しいことではないだろう。

まず勉強が簡単になる。資格試験も容易にクリアできるようになる。特に記憶力がものをいう分野においてはパーフェクトな結果が出せるだろう。クイズ王になるのも簡単かもしれない。

いつどこで誰と会って、何を話したのか完璧に記憶することができ、そしてそれを忘れない。仕事上においても普通の人より有利だろう。経験したことはすべてもらさず蓄積されていくのだから。少なくとも忘れないようにメモを取る必要はなくなる。

なんだかいいことしかないような気さえしてくる。

 

でも、「忘れる」という能力は人間が人間であり続けるために必要なものだ。

人はそんなに強くはない。

それどころか、肉体的にも精神的にもとても弱い生き物だと思う。

人生が楽しいことや幸せなことばかりなら良いけれど、辛いことや苦しいこと、悲しいことも人生にはたくさんある。誰もが少なからずそうした経験をする。

身近な人の死に直面したり、事故や犯罪の被害に遭ったとしたら。人生に絶望するような辛い経験を、その瞬間の光景のみならず、色も、音も、匂いさえも、事細かにすべてを記憶し、しかもそれを鮮明なまま忘れられないとしたら?

きっと正気ではいられない。

 

人は忘れるいきもの。

幸せな記憶は時間とともにゆっくりと色あせていくけれど、それと同じように、人は忘れることで心の傷を埋めていくこともできる。忘れることで前に進むことができる。

もし永遠に鮮明な記憶であったなら、生きていくことができないだろう。

 

人間はちょっと忘れっぽいくらいでちょうどいいのかもしれない。